グッド・イブニングAmerica:「繭」の生活=大治朋子 経済が不振になると、米国人の生活はどう変わるのか。そう思っていたら、こんな言葉に出くわした。 ステイケーション。英語で休暇…
グッド・イブニングAmerica:「繭」の生活=大治朋子
経済が不振になると、米国人の生活はどう変わるのか。そう思っていたら、こんな言葉に出くわした。
ステイケーション。英語で休暇のバケーションという言葉と滞在のステイという言葉を合わせた造語で、遠出を控えて近場で休みを過ごすという意味だ。米同時多発テロの直後、飛行機に乗るのを恐れて休みを地元で過ごす人が増えた時も、この言葉がよく使われた。最近また耳にするのは、不景気で財布のひもが締まっているからだ。
米CNNの調査によると、米国ではこの不景気で7割弱の人が旅行や外食、映画の回数を減らしているという。そういえば年末のクリスマス風景もかなり様変わりした。米国人は家族や友達に大量のプレゼントを配る。私の友人は「毎年30人ぐらいに渡す」と豪語していたが、自分で作った小物を懸命に包装紙で包んでいた。特に女性の間ではお菓子やビーズ、編み物などの手作りプレゼントが流行した。しかしそれを楽しんでいるかというと微妙で、先の調査によれば、贈り物をいかに安く抑えるかを考えて4割の人が「ストレスがたまった」と答えている。
出費を抑える動きを経済の専門家は「消費の落ち込み」と危険視する。だが、悪いことばかりでもない、と思う。
米タイム誌が面白い調査をしていた。今年初め、全米のスーパーで商品の種類別売り上げを昨年の同時期と比較したところ、売り上げが大幅に落ちたのはジャムやピーナツバターで12%減、クッキーやアイスクリームは10%減。伸びたのは肉(7%)、めん類(4%)、小麦粉(3%)など。甘いものが大好きな米国人だが、菓子類は節約して基本的な食材にお金をかけているようだ。おなかにたまらない野菜も真っ先にカットされるのではと思ったが、売り上げは6%増で、食生活は健康的になりつつある。
そしてもう一つ、地味だが着実に売り上げを伸ばしているのが「家族計画」用品(1・5%増)。避妊具である。経済の不振で子作りを控えているのか夫婦の仲が良くなっているのかは不明だが、ともかくほほ笑ましい話である。
スーパーの市場調査担当は最近、もっぱら「コクーナーズ」に焦点をあてているそうだ。英語で繭を意味するコクーンという言葉を家に例えた造語で、良く言えば自宅での生活を楽しむ、悪く言えば家に引きこもる人々のことである。不景気で家庭での生活が改めて見直されているのだとすれば、悪い話でない。(北米総局)
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毎日新聞 2009年5月11日 東京夕刊